モンキー125・CT125・グロム系のABS機能の仕組みと改造方法およびOPマルチメーターとの併用時の設定値について解説します。
まずABS作動の仕組みについてですが、ABSモジュレーターが前輪と後輪の車速信号を読み取り、その回転差で前輪のロックを検知しABSを作動させます。
タイヤの空気圧や摩耗に備えて回転差には許容範囲がありますが、スプロケットやリアタイヤの変更で後輪の車速信号だけが大きく変わるとABSエラー(警告ランプが点滅)となりABSは作動しなくなってしまいます。また、スピードメーターにも狂いが生じます。
この様なABSエラーの回避とメーターの狂いを補正するためには、後輪の車速信号を補正する装置(以下当社品名の”ドクタースピード”)が必要になります。
ドクタースピードを取り付けることでABSエラーを回避し、スピードメーターの狂いも補正できます。
なお、当社のOPマルチメーターの様な社外メーターに備わっているスピードの補正機能はあくまで「メーター内部での補正」のため、ABS装置側の出すエラーの対策にはなりません。後輪の車速信号はまず最初にABSモジュレーターへ入るためです。
ドクタースピードの取り付け位置は、車速センサーとABSモジュレーターの間になります。
以下の改造を行った際にはドクタースピードが必要になるとお考えください。
・スプロケットの歯数を変更
・リアタイヤのサイズを変更
※トランミッションの交換でカウンターギアの歯数が変わる場合やフロントタイヤの変更も影響します。これについては後に記述します。
※ABS装置の許容範囲は約±6%(当社調べ)で、目安として「フロントスプロケットの歯数を1T変える」と許容範囲外となります。リアタイヤのワンサイズアップ程度であればたいてい許容範囲に収りますが、スピードメーターの表示値は遅い方へズレます。
スプロケットやタイヤサイズ変更時のドクタースピードの設定値について
スプロケットを変更した場合は、ノーマル前後スプロケット比から交換後の変化量を、リアタイヤのサイズを変更した場合は、ノーマルリアタイヤ直径から交換後の変化量を、両方変更した場合は、各変化量を掛け合わせた値を入力します。
・ロング仕様のスプロケットへ=設定値は増加方向
・大きなリアタイヤへ=設定値は増加方向
※OPマルチメーター側のスピード関連の設定項目は標準値のままにしてください。
モンキー125(JB02):【1.3】速度誤差補正:100.0% 【1.4】フロント:15T 【1.5】リア:34T 【1.7】リアタイヤ直径:515mm
CT125(JA55):【1.3】速度誤差補正:100.0% 【1.4】フロント:14T 【1.5】リア:39T 【1.7】リアタイヤ直径:576mm
GPSメーター等と比べて微調整する場合は、【1.3】速度誤差補正をお使いください。
また、リアタイヤのワンサイズアップ程度の変更であれば、たいていABS装置の許容範囲(±6%程度)に収まります。その場合はドクタースピードを使わずメーター側の【1.7】リアタイヤ直径で補正していただいても大丈夫です。
JB02モンキー125のABS無しモデルやその他のABSの無い海外モデルでは、前後スプロケットとリアタイヤサイズの変更に伴う補正をOPマルチメーター側で行えますので、ドクタースピードは必要ありません。
変更した前後スプロケットの歯数とリアタイヤサイズをメーターの設定画面にてそれぞれ入力してください。
ABS付きモデルでもABS機能をキャンセルする場合は、前後スプロケットとリアタイヤサイズの変更に伴う補正をOPマルチメーター側で行えますので、ドクタースピードは必要ありません。
確実にABSを作動させないために、フロントの車速センサーのコネクターを抜いてください。
メーターの設定項目【4.3】ABS有無の設定を”OFF”に切り替えてください。メーターのABSランプを強制的に消灯します。
変更した前後スプロケットの歯数とリアタイヤサイズをメーターの設定画面にてそれぞれ入力してください。
社外の5速トランスミッションへ交換している場合
武川社製JB02用5速ミッションキットの場合(セカンドカウンターギア:32T)
多段数化に伴いセカンドカウンターギアの位置が少し変わるため、基本的には同社製の後付け車速センサー(スピードセンサーキット)も必要になります。ただ、ノーマル車速センサーをそのまま使えたという報告もありますので、ここでは2種類の設定値を説明します。
「武川製車速センサーを付けている場合」
車速信号については、武川社のキットに付属の変換装置にて補正済みのため、OPマルチメーター側のスピード関連の設定項目は標準値のままにしてください。
【1.3】速度誤差補正:100.0% 【1.4】フロント:15T 【1.5】リア:34T 【1.6】車速信号数:31 【1.7】リアタイヤ直径:515mm
※GPSメーター等と比べて微調整する場合は、【1.3】速度誤差補正をお使いください。
メーターの設定画面で各ギアの変速比を入力します。
【5.2】1速:2.333【5.3】2速:1.684【5.4】3速:1.272【5.5】4速:1.040【5.6】5速:0.923【5.7】NON
「ノーマル車速センサーを利用する場合」
メーターの設定画面で必要な値を入力します。
【1.6】車速信号数:32
【5.2】1速:2.333【5.3】2速:1.684【5.4】3速:1.272【5.5】4速:1.040【5.6】5速:0.923【5.7】NON
前後スプロケットやリアタイヤを変更している場合は上の「ドクタースピードの組み合わせ」の内容をご参照ください。
キタコ社製JB02用5速ミッションキットの場合
トランスミッションの仕組みの都合上、ニュートラル時にセカンドカウンターギアが空転する(=ノーマル車速センサーを利用するとニュートラル時に表示速度が上がってしまう)ため、同社製の後付け車速センサー(速度パルス変換ユニット&センサー)との組み合わせが必要になります。
ただし、メーターの出力するセンサーの駆動電圧の僅かな違いのために、キタコ社の説明書通りに接続しても車速センサーが機能しません。その対策として、車速センサーキットの電源線(赤コード)の接続先を車体ハーネスの3Pカプラーからキーオン12V電源(アクセサリー電源)へ変更してください。おすすめの接続先はリアブレーキスイッチのプラス側(黒コード)になります。
車速信号については、キタコ社のキットに付属の変換装置にて補正済みのため、OPマルチメーター側のスピード関連の設定項目は標準値のままにしてください。
【1.3】速度誤差補正:100.0% 【1.4】フロント:15T 【1.5】リア:34T 【1.6】車速信号数:31 【1.7】リアタイヤ直径:515mm
※GPSメーター等と比べて微調整する場合は、【1.3】速度誤差補正をお使いください。
メーターの設定画面で各ギアの変速比を入力します。
【5.2】~【5.6】に各ギアの変速比を入力します。
【5.2】1速:2.571【5.3】2速:1.722【5.4】3速:1.333【5.5】4速:1.130【5.6】5速:1.000【5.7】NON
フロントタイヤのサイズを変更している場合
この補正を正しく行うには、ドクタースピードだけでは不足で、当社のOPマルチメーターの様なメーター側でスピード表示を補正できる社外メーターとの併用が必要になります。
例えば、フロントタイヤを小さくすると前輪側の車速信号の数が増えるので、後輪の車速信号を補正で増やしてABSのエラー対策をする必要があります。しかし、後輪の車速信号はメーター用の信号を兼用しており、そのままですとメーターの表示速度が高速側へズレてしまいます。そこで、社外メーター側でそれを低速側へ補正する必要が出てきます。
複雑な補正が必要になりますので、ワンサイズ程度の変更で実走行においてABSエラーが出ない場合は無視して良いかと思います。
「前輪を小さく/後輪を大きくしている、又はその反対」
前輪と後輪の変更値を合わせた補正値をドクタースピードへ入力することで前輪/後輪の回転差を無くし、ABSエラーが出ない様にします。ただしメーターへ入力される車速信号は正しくないため、OPマルチメーターで表示速度を適切な値へ補正します。
文章での説明が複雑になりますので、下のマルチ計算機を使い補正値を確認してください。
「前輪/後輪共に同じサイズへ変更している場合(ホイールインチダウン/アップ等)」
前輪/後輪の回転差が発生しないためドクタースピードは必要ありません。
OPマルチメーターへ実際のタイヤサイズを入力していただくだけで大丈夫です。
ただし、スプロケットの歯数も変更する場合は前輪/後輪の車速信号がズレるため、ドクタースピードが必要になります。下のマルチ計算機を使い補正値を確認してください。
マルチ計算機
タイヤ直径の簡易計算機
オプミッド